ノルウェーでアンモニアを燃料とする洋上施工船の開発が進行中【脱炭素電源建設・運営の脱炭素化】

洋上風力先進地ノルウェーの取り組み
EquinorやFred. Olsenなど多くの洋上風力関連企業を擁する洋上風力先進国ノルウェーにおいて、洋上風力発電所の建設、運営の脱炭素化に向けた取り組が進められています。
ノルウェーの官民連携プロジェクトであるGreen Shipping Programme(GSP)において、脱炭素に向けた次世代エネルギーとして水素と共に有望視されているアンモニアを浮体式洋上風車の設置・O&M用船舶に利用する取り組みです。
GSPにはノルウェー政府や地方機関、ABBやEquinorなど各国の民間企業の他にDNVなどの第三者認証機関も参画しており、洋上風力に限らずノルウェーにおける海運関連産業の脱炭素に向けた多くのプロジェクトが進行中です。
本プロジェクトで開発されたアンモニアを燃料とする浮体式洋上風車据付・O&M用船舶は事業主体のうちの1社であるØrstedが開発を進めるノルウェーの浮体式洋上風力発電事業で使用される見込みであり、脱炭素電源の建設、運営においても脱炭素化が進められています。

日本におけるアンモニアの活用
GSPに似た取り組みとして、日本国内ではNEDOのグリーンイノベーション基金が挙げられます(こちらは海運に限らずより幅広いプロジェクトへの補助を対象としています。)
NEDOの事業においては、アンモニアサプライチェーン構築に加え、火力発電におけるアンモニア混焼、ガラス製造などのアンモニアの工業利用の研究が進められています。
「燃料アンモニアのサプライチェーン構築」
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101502.html
「アンモニア混焼技術の実用化へ向けた技術開発を加速」
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101432.html

アンモニア利用イメージ
Source: NEDO

国内海運におけるアンモニア活用プロジェクト
同じくNEDO事業における本記事の取り組みと似た取り組みとして、アンモニアを燃料とする外航船、内航船の開発が日本郵船、日本シップヤード(ジャパンマリンユナイテッドと今治造船の合弁会社)、IHIなどにより進められています。
小型のタグボート(曳船)を内航船として、大型のアンモニア輸送船を外航船として開発・建造する計画であり、タグボートは来年度には竣工し、実証運航が始まる計画です。(リンク先に詳細スケジュールがあります)
https://www.nyk.com/news/2021/20211026_03.html

内航船(タグボート)
Source: 日本郵船
外航船(アンモニア輸送船)
Source: 日本郵船

日本国内では昨年清水建設のSEP船であるBLUE WINDや五洋建設のCP-16001が完成するなど洋上風力向け船舶の建造が続いていますが、アンモニアで動く船舶が見られる日が近いうちに来るかもしれません。

以下は筆者による私訳です。
Fred.Olsen Seawind社、Hafslund社、Ørsted社で構成されるコンソーシアムのBlåvingeは、浮体式洋上風力発電の据付船、特にアンカーハンドリング船が、海上作業用の燃料としてグリーンアンモニアが使用可能かどうかを調査するパイロットプロジェクトを開始した。
グリーン・シッピング・プログラム(GSP)の下で開始されたこのプロジェクトの目標は、浮体式洋上風力タービンの設置・運転にゼロエミッションのソリューションを導入することであり、3社によれば、ノルウェーのUtsira Nord浮体式洋上風力発電プロジェクトにすでに採用される可能性がある。
同3社は、このパイロットプロジェクトにより、Utsira Nordにおける浮体式洋上風力発電プロジェクトの設置・運転段階において、アンカーハンドリング船にグリーンアンモニアを使用できるようになることを期待している。
「この試験的な取り組みが成功すれば、Utsira Nordを世界で最も持続可能な浮体式洋上風力発電プロジェクトにする確かな一助となるでしょう」と、BlåvingeのErlend Gjelstad Jakobsenは話す。
コンソーシアムによれば、ノルウェー海域では現在、海洋船舶からの排出が最大の排出項目となっている。これは、ノルウェーの大陸棚海域での活動が活発であることと、エネルギーを大量に消費する操業が行われていることの両方が原因である。
「洋上風力発電所の設置やメンテナンスには、洋上船舶、特にアンカーハンドリング船を広範囲に使用する必要がある。100%の排出削減は、グリーンアンモニアのようなカーボンニュートラル燃料によってのみ達成できる。このプロジェクトが成功すれば、洋上風力タービンの設置は、現在よりも温室効果ガスの排出量を大幅に削減できることになります」とJakobsenは話す。
グリーン・シッピング・プログラムは、ノルウェーが世界で最も効率的で環境に優しい海運を発展させることに貢献することを目的とした、民間と公的機関のパートナーシップである。
Blåvingeは、DNVや、船舶設計・造船会社であるVard社を含む他の多くのパートナーとともに、GSPにおける新しいプロジェクトのパイロット・オーナーを務めている。
第一段階では、GSPの参加者は、技術的および財政的な実現可能性を評価するフィージビリティ・スタディを実施する。さらに、地域におけるアンモニアのバリュー・チェーンの条件と障壁についても調査される。
GSPのプロジェクト・マネージャーであるDNVのMagnus Eideは、「ノルウェーにおける浮体式洋上風力発電の排出削減の実現に加え、ノルウェーおよび国際的な洋上産業におけるこの技術のさらなる利用・応用の可能性があると考えています」と話す。
ノルウェーには、現在世界最大の浮体式洋上風力発電所であるHywind Tampenがあり、METCentreサイト(北海地域における浮体式洋上風力技術のテストサイト)でテスト中の浮体式洋上風力タービンもある。
ノルウェー政府は今年3月、Southern North Sea IIとUtsira Nordという2つの洋上風力発電区域の申請受付を開始し、後者は浮体式風力発電プロジェクトに指定されている。
同エリアは1.5GWの容量を持ち、政府は3つのサイトに分割し、それぞれに500MW規模の発電所が設置され、落札者は2023年末までに発表される予定である。
Ørsted社は、Fred.Olsen Seawind社とHafslund社と共同で着床式洋上風力発電と浮体式洋上風力発電の両方でノルウェーの入札に参加する計画を昨年明らかにしている。
今月初めには、このコンソーシアムは、洋上風力産業におけるスタートアップ企業や成長企業の成長を促進することを目的としたNorwegian Offshore Windのアクセラレーター・プログラムのパートナーにもなっている。



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