JERA 台湾のフォルモサ3からの撤退を計画【JERAの再エネ戦略への逆風】

  • 東京電力と中部電力が出資するJERAは、権益を保有する台湾の洋上風力プロジェクトであるフォルモサ3からの撤退を発表した。
  • 約44%の所有権益をすべて売却する予定だが売却先は未定だ。
  • 資材価格・建設コストの上昇とともに、台湾海峡に関する地政学リスクも撤退の原因の一つとなっている。

JERAの再エネ戦略
東京電力フュエル&パワーと中部電力が50%ずつ出資し、燃料の上流での開発から調達、発電事業投資、石炭・LNG火力発電所の運営を手掛けるJERAは、火力発電の大手であるとともに再エネ戦略として海外の風力発電を中心に積極的に出資しています。
洋上風力発電事業にも積極投資しており、現在の海外洋上風力の出資先は以下の通りです。

 〇出資する洋上風力発電事業(カッコ内はJERAの持ち分権益)
   英国 ガンフリートサンズ:172.8MW(24.95%)
   台湾 フォルモサ1:128MW(32.5%)
   台湾 フォルモサ2:376MW(49%)
   台湾 フォルモサ3:2,004MW(43.75%)

2018年末に英国南東部のエセックス州沖合のガンフリートサンズの権益取得を発表して以降、2019年には台湾のフォルモサ1、フォルモサ2への参画を立て続けに発表しており、先行する欧州、台湾の案件に参画し、そこで得た知見を日本国内の洋上風力発電事業の開発に活用する戦略をとっています。
ちなみにJERAの参入時点でガンフリートサンズは運転開始済み、フォルモサ1, 2は建設工事中、フォルモサ3は開発フェーズであり、徐々に案件の早期段階への関与を深めています。

国内洋上風力への参入
海外案件で得た知見を日本で活かすべく、一昨年12月に結果が公表されたラウンド1からJERAは一般海域における洋上風力発電事業の公募に参加しています。
ラウンド1ではJ-Power、Orsted(デンマーク)とのコンソーシアムとして秋田県の能代市・三種町・男鹿市沖と由利本荘沖の2海域で応札、ラウンド2では秋田県 八峰町・能代市沖と男鹿市、潟上市及び秋田市沖の2海域での環境アセスの配慮書を公表しています。
https://www.jera.co.jp/information/20220127_830
https://www.jera.co.jp/information/20230116_1059

台湾のフォルモサプロジェクト
フォルモサプロジェクトは台湾北西部の台湾海峡で運開済みおよび計画されている一連の洋上風力発電プロジェクトであり、フォルモサ1は2020年1月に商業運転が開始、フォルモサ2は2023年2月に風車の据え付けが完了しています。
なお、両プロジェクトともシーメンス・ガメサの風車が採用されています。
 https://www.jera.co.jp/information/20200106_448
https://www.jera.co.jp/information/20230201_1081

据付工事が完了したフォルモサ2
Source: Formosa 2

1,2にくらべて発電規模が格段に大きいフォルモサ3は2018年にすでに環境アセスの承認を得ており、入札フェーズに進む準備ができているとHPでは発表されています。
https://www.formosa3windpower.com/en/news/21

再エネを襲う資材価格高騰
日経新聞の元記事ではJERAのフォルモサ3からの撤退の背景として新型コロナウイルスの影響による資材価格や建設価格の高騰が挙げられています。
物価上昇は風力発電業界に限ったことではありませんが、日本風力発電協会が作成した2022年11月の調達価格等算定委員会資料では風車製造に必要なキロワットあたりのコストが示されており、製造コストに占める鉄鋼価格は2022年において2020年の価格から約2倍となっています。

Source: METI

風車価格の上昇は再エネ業界における風車発注数にも影響を及ぼしています。
ヨーロッパのNPOのWind Europeが発表したレポートによると、2022年に入り資材価格の高騰などにより風車発注(発電容量ベース)が急激に減少しています。

Source: Wind Europe

日本企業の海外洋上風力プロジェクトへの出資
今回のJERAのフォルモサ3撤退の背景には台湾海峡の地政学リスクへの懸念もあると報じられています。台湾はアジア有数の洋上風力先進地域であり、フォルモサプロジェクト以外にもENEOSや双日、関西電力と中部電力が出資するユンリンプロジェクトなど複数の洋上風力発電プロジェクトが進行しています。
多くは台湾西部の台湾海峡の海域であり、台湾有事リスクが高まっている状況では、JERAだけでなく、他の日系企業を含む海外企業による台湾への投資戦略を見直すきっかけになるかもしれません。

以下は筆者による私訳です。
日本経済新聞によると、JERAは、コリオ・ジェネレーションと共同所有している台湾海域のフォルモサ3洋上風力発電プロジェクトの持分を売却する意向だという。
建設コストの増大と低い収益性に対する懸念が指摘されている。
JERAは、数カ月以内に44%の所有権をすべて売却することを希望している。この報道によると、同社はすでに台湾当局に、建設コストの上昇と台湾海峡周辺の地政学的リスクから、この開発から撤退する決定を通知しているとのことである。
Formosa 3は、台湾中西部の彰化沖に位置し、Haiding I、II、IIIの3つのサイトで構成されている。2018年に環境影響評価(EIA)認可を取得し、EIA認可された容量は2GWにのぼる。洋上風力発電所の運転開始は2026年の予定だ。
JERAは、東京電力ホールディングスと中部電力が50:50出資で設立した合弁会社で、2020年に1兆円(76億ドル/71億ユーロ)のFormosa 3の株主となり、GIG(Green Investment Group)とドイツのエネルギー会社のEnBWから43.75%の株式を取得した。マッコーリーグルーのGIGの事業会社であるコリオジェネレーションは、このプロジェクトの過半数所有者だ。

JERAは、台湾沖のフォルモサ1(128MW)とフォルモサ2(376MW)の両プロジェクトに参画している。


 

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